日本企業が成長していくためには、IT投資による業務の効率化を目指すだけでなく、DXを通じて事業再編を断行し、多様な働き方の実現や新たなビジネスモデルの創出を含む果断な経営判断が求められています。同時に、地球温暖化や経済格差といった世界的な課題に取り組みながら持続的発展を遂げるために、企業経営者は、顧客や従業員、地域社会、株主等のステークホルダーとコミュニケーションをとりながら、経済・社会・環境のバランスにも配慮しなければなりません。従来以上に情報を整理し、分析する能力が問われているほか、コンプライアンス体制やリスク管理の強化、経営の透明性向上が急務となっています。
このような環境の中で、経営情報の「見える化」・「使える化」・「任せる化」を通してお客様企業の課題解決に貢献する当社グループの事業の役割はより重要なものになっています。私たちは、日本における成長機会を追求しながら、中長期経営戦略で目指している世界市場で通用する企業としてのポジションを確立するために、事業拡大と資本効率の改善の両面で成長し、グループの企業価値最大化を目指す必要があります。2018年9月に発表した中期経営計画「BE GLOBAL 2023」では、 10年にわたる中長期経営戦略の前半部分にあたる2019年6月期から2023年6月期までの5年間を通じて「企業価値の最大化」に向けて、3つの軸をもって実現を図っていきます。
事業成果 |
売上成長・高収益性の追求
市場機会を捉えて各事業における新規顧客開拓による顧客数の拡大や新製品の開発・販売を行うとともに、お客様企業の課題解決に向けて、必要であれば個々の事業会社の垣根を越え当社グループの総合力で製品の提案、販売を行い、さらなる売上成長を追求していきます。製品の品質・生産性の向上や効率化を進め高収益化を図っていきます。また、当社グループの中長期的な成長には、お客様企業におけるニーズや周辺環境の変化を的確に反映した製品開発のための体制強化が非常に重要であることから、中長期的な視点で必要となる開発投資は継続的に実施していきます。
投資効果 |
M&Aによる成長
本計画では既存事業の価値最大化に主軸を置いており、既存事業の価値創造による成長に加えて、その成長をさらに加速させるべく、当社グループの成長領域と合致する企業とのM&Aを目指します。このM&Aは、売上高規模の目標達成だけでなく、ビジネスモデルの転換を促すための手段の一つとして捉えています。M&Aの機会があった場合には、当社グループの企業価値向上に資するかどうかを慎重に判断のうえ、M&Aの実施が目的になることがないよう注意しながらも積極的に推進します。
市場評価 |
ビジネスモデルの転換
当社グループでは、企業価値をより高めるに当たって、安定的かつ継続的な収益獲得に着目しており、中期経営計画において、ストック売上比率(売上に占める保守料等の継続的な売上の割合)を高めていくことを目標として掲げています。この実現のために、ビジネスモデルの転換を推進していきます。ストック売上比率は自社製品のパッケージソフト導入後の保守や、連結決算や連結納税などの業務を受託するサービスが中心です。それ以外の業務につきましては、「工数×単価」をベースにお客様に請求する 契約が中心となっており、売上規模の拡大には人員増加を必要とするビジネスモデルになっています。これをお客様に提供する付加価値をベースとする契約にシフトすることで、売上規模を拡大しながら収益性・効率性を高めることができると考えています。今後は、ある一定期間の利用権として料金をお支払いいただくクラウド製品を開発、販売していきます。
中期経営計画「BE GLOBAL 2023」では、ビジネスモデルの転換を図るため、売上高、営業利益、ROE、配当といった指標に加え、当社独自にストック売上比率、売上成長率+営業利益率という指標を設けています。
<売上高>
売上高は2023年6月期に180~220億円とすることを目標としております。これは前連結会計年度の売上高から平均成長率10%前後で売上成長を実現した場合の売上高となります。
<ストック売上比率>
ストック売上とは、ソフトウエアの保守料のような毎期継続的に発生する売上を指し、売上高に占める比率である「ストック売上比率」を70%まで向上することを目標として設定しております。
<営業利益>
中長期経営戦略で目標として設定している平均成長率18%を、中期経営計画でも目標としております。
<売上成長率と営業利益率の合算値(GPP) >
GPPは、利益を犠牲にして規模拡大を追求するのではなく、企業価値を拡大させるため、利益成長を伴う売上拡大を目指すために設定した指標です。世界的なSaaS企業がこの合算値40%以上であることから、我々AVANTグループもそうした企業に比肩する健全性を持つため、この合算値を40%以上にすることを目標に設定しています。
<ROE>
当中期経営計画の実現のためには、既存の3事業の成長だけではなく、内部投資あるいは外部成長の取り込みなど、 投資的な活動も必要であると認識しておりますが、投資活動を実施する際の目安として、中長期的にROEを20%以上に維持することを目標として設定しております。
<配当>
当社は配当を株主還元政策の重要事項として位置付け、純資産配当率などの指標に注目し、毎期の業績に大きく左右されることなく、配当金額を安定的に維持・向上していくことを指向しております。2023年6月期 には1株あたり15円の配当を行えるだけの経営成績および財務状況を実現することを目指しております。
FY19 実績 |
FY20 実績 |
FY21 実績 |
FY22 実績 |
FY23 目標 |
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売上高(億円) |
140.7 |
156.9 |
162.3 |
187.0 |
180~220 |
ストック売上比率(%) |
31.4 |
32.7 |
36.0 |
34.6 |
70 |
営業利益(億円) |
19.6 |
22.7 |
27.9 |
32.4 |
31~38 |
売上成長率+営業利益率 (ポイント) |
30.2 |
26.0 |
20.7 |
32.6 |
40以上 |
ROE(%) |
24.6 |
23.5 |
23.6 |
21.1 |
20以上 |
配当(円) |
7.5 |
9.0 |
11.0 |
13.0 |
15以上 |
当資料に掲載されている業績見通し、その他今後の予測・戦略などに関する情報は、当資料の作成時点において、当社が合理的に入手可能な情報に基づき、通常予測し得る範囲内で行った判断に基づくものです。しかしながら実際には、通常予測し得ないような特別事情の発生または通常予測し得ないような結果の発生などにより、資料記載の業績見通しとは異なる結果を生じ得るリスクを含んでおります。当社は、投資家の皆様にとって重要と考えられるような情報について、その積極的な開示に努めてまいりますが、当資料記載の業績見通しのみに全面的に依拠してご判断されることはくれぐれもお控えになられるようお願いいたします。なお、いかなる目的であれ、当資料を無断で複製または転送などを行われないようにお願いいたします。
2023年6月期は中期経営計画「BE GLOBAL 2023」の最終年度にあたりますが、「BE GLOBAL 2023」で目指した三つの基軸(①グループ総合力でさらなる売上成長を追求、②成長加速のためのM&A、③ビジネスモデルの転換)のうちビジネスモデルの変換については大きな成果を得られておらず、その進捗指標として設定していたストック売上比率は2022年6月期においても35%にとどまり、目標である70%に達することは困難と考えられます。
このため、2021年後半より早々に次期中期経営計画の策定に着手し、グループ経営戦略執行チームと共に、ビジョンの実現のためにグループが何をすべきかを議論し、これをアバントグループのマテリアリティ「企業価値の向上に役立つソフトウエア会社になる」としてまとめました。このマテリアリティを実現するための具体策として、組織を再編成することとなりました。
2023年6月期を通じて、各社は新体制下でさらに明確になった方向性に向けて、次期中計経営計画をスタートさせるための準備を進めます。既存事業において低収益製品やプロジェクトの整理等、クラウド化を加速するための環境整備を進めます。また、新中期経営計画期間で推進すべく、将来の主軸となる製品開発や実装型コンサルティング事業の強化に向けて積極的な採用を進めていきます。さらに、当社グループと個々の事業会社の市場認知度を向上させるための活動を展開する計画しているため、2023年6月期から次期中期経営計画スタート直後の決算期につきましては、売上高の伸びに対して利益の伸びが劣後する、先行投資フェーズの状態が続くと予想されます。
次期中期経営計画においては、売上高の年率成長率(CAGR)は20%以上を、中期経営計画の後半においては、EBITDAマージンとの合計(Growth and Profit Point、以下GPP)で40ポイント以上を目指します。また、ROEは平均20%以上を維持し、株主還元としてはDOEを現行の5%台から8%へ徐々に引き上げることを目標としております。
次期中期経営計画における戦略の詳細、各事業会社の戦略、特に重要なKPIについては2023年6月期を通じて組織を軌道に乗せながら議論を進め、然るべき時期に開示する予定です。
戦略 |
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成長性・収益性 |
※ GPP=売上高成長率+EBITDAマージン |
資本戦略 |
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