2019年1月4日

株式会社アバント
代表取締役社長 森川 徹治

 
2019年 年頭所感

『和魂洋才』

 

皆さま、あけましておめでとうございます。年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 

To be OPEN to change
to be open to change.(変化に寛容であれ)。
2003年から私の座右の銘となった言葉です。当時、経営において大きな壁にぶつかり、ニッチもサッチも行かない精神状態にあった中、ボーッと見ていたキャメロン・ディアスのインタビューで彼女が発した言葉です。

 

その言葉を聞いて「ああ、自分は今、変化に抵抗しているのか。」そんな風に感じました。生きている以上、身体も環境もどんどん変化します。しかし、自分の思考が変化に適応できないことが時々生じます。

 

理由はシンプルです。変化を見過ごしているか無視しているかのいずれかです。

 

 

受け入れるには痛みを伴う
2003年当時の理由は「無視」でした。成功の呪縛のようなもので、従前の勝ちパターンが通用すると信じ、それにこだわった結果、状況は悪くなるばかりでした。今振り返ると、全ての勝ちにパターンなどありません。勝ちはパターンの破壊と創造の繰り返しによってのみ得られるものであり、変化の落とし子です。

 

しかし、成功体験は鮮烈な記憶を残すので、どうしても勝ちパターンとして強烈に記憶されてしまいます。また、染みついたパターンを壊すのはかなりの精神的痛みを伴います。人間ですから、痛みは避けたいものです。ゆえにその痛み以上の痛みを感じない限り、自己変革を課すことはなかなか出来ません。

 

 

昨年は変化の大きな年だった
そんなことを思い出しながら振り返ると、昨年は経営者人生の中で最大の変化の年でした。従来の成功体験が通用しないばかりか、全く新しい視座を身につける必要に迫られました。その変化は東証一部への指定替えによってもたらされました。

 

以前は、市場などどこでも同じだろうと考えていましたが、指定替えによって生じた株主構成の変化に端を発し、「公器」としての覚悟をリアルに問われるようになりました。

 

新たな進化圧により、現在の危機ではなく、将来の危機に対する行動の比重を大きくする必要に迫られました。将来の危機とは単なるリスクではなくチャンスでもあります。しかし、ゼロ・トゥ・ワンと呼ばれる起業家畑の人間にとって、ファイナンス的な将来の危機に対する考え方と行動を身につけることは簡単ではありません。

 

社外役員を始め、様々なプロフェッショナルからの指導を受けながら、新たな変化を受け入れようと必死にもがき続けた一年でした。

 

 

和魂洋才
極めて狭窄な世界観ですが、以前から私は「この世にはオカネの国とモノツクリの国があり、私はモノツクリの国の住人である」と言って来ました。金融経済と実体経済を言い換えた言葉ですので、それぞれに是非はありません。ただ、それぞれの国では価値観は異なります。オカネの国では経済価値の最大化が優先順位の一番であり、モノツクリの国では存在価値の最大化が一番であるからです。

 

日本には存在価値を尊ぶ文化があると思います。鎌倉武士の「名こそ惜しけれ」―命を惜しむな、名を惜しめという精神に震えるほどのシンパシーを感じてしまうのは、その文化の中で生きて来たからでしょう。

 

上場企業は企業価値の向上を第一に問われます。それは歴然のことであり、上場企業はオカネの国で生きています。よって、モノツクリの国の人間が上場企業を経営するということは、価値観や文化の異なる外国で勝負しようとしているようなものです。
それでも、生きる国を変えても価値観までを変える必要は無く、むしろ本来の価値観を大切にしなければ幸せから遠ざかる。それがもがいた結果の結論でした。和魂洋才です。

 

存在価値の最大化を通して企業価値の最大化を目指す。重要なことの順番を違えず、これからもモノツクリの国が生んだ公器としての会社つくりに取り組んでいく。そんな覚悟をもって年頭の所感とさせていただきます。

 

株式会社アバント
代表取締役 グループCEO